ガラガラさんのおはなし

その12 オバケギンナン

その木は、
森のはずれにありました。

大きな大きなイチョウの木。

ガラガラさんのカレー屋さん。

ガラガラさんのちいさなちいさなころから、
大きな大きなイチョウの木でした。

かぜのつよい、なつのよるには、
ざわざわと、話しかけるように、うすい葉がこすれてゆれました。
しずかなふゆのつきよには
ギイギイと、つめをたてるように、いくえものかげがおちました。

「オバケギンナン」

ちいさなちいさな
ガラガラさんは
そうなまえをつけました。

ギンナンのにおいは
すこしにがてでしたけれども、
ガラガラさんは
このこわい木が大好きでした。

大きくなったガラガラさん。

カレー屋さんのみちすがら、
今でもこの木がこわくって、
今でもこの木が大好きでした。

秋はしだいに、ふかまります。

きのうは雨がふりました。
きのうは風がふきました。
きのうは森がゆれました。

ガラガラさんは、
すがたのかわった、
オバケギンナンにであいました。

じめんは黄いろに
しきつめられています。

大きなたくさんのつめは
ねもとから、おれています。

まるではだかのような、
オバケギンナン。

ガラガラさんの目に、
なみだがたまりました。

けれでも
ガラガラさんは、
あたまをこつんとされました。

もういちど、こつんとされました。

きのうの風にも落ちなかったギンナン。
ガラガラさんのあたまにおちたギンナン。

たまったなみだはどこにいったかわかりません。

すこしにがてな、ギンナンのにおい。

ちゃんとまたくるよって、
つたえてくれました。

ガラガラさんのカレー屋さん。
秋はしだいに、ふかまります。

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